■バンティムルンの自然

イギリスの博物学者ウォーレスはこのスラウェシ島の生物相がアジア区、オーストラリア区に属するのか困惑した。 その理由はスラウェシ島にはアジア区に見られマカクに属する猿、Macaca Nigra(ブラックモンキー)とオーストラリア区に棲息しているTarsius Spectrum(スラウェシメガネザル、タルシウス)や Sulawesi Cuscus(クロクスクス) が共存していたからだ。

その理由としては約250万年前にアジア大陸とオーストラリア大陸がぶつかり、一つになった島であるという説が有力で、その後の地殻変動にも影響されずに大陸から隔離され、孤立したために独自の進化を遂げた動植物が生息しているのである。また、スラウェシ島で確認されている127種類の哺乳類のうち、79種類はスラウェシ島の固有種である。

バンティムルンにはアジア区に属するブラックモンキーが数多く暮らしている場所である。



■バンティムルンの森

スラウェシの森はアルカリ土壌の為か、比較的開けた印象で見通しが良い。
森の中をひらひらと飛んでいた虫はスティックインセクトだ。自分の体を木の枝に擬態し外敵から身を守っている。擬態にはかなりの自信があるらしく、危険を感じると全く動かなくなる。

湧水が染み出す湿った場所にはショウガの仲間と共にワイルドミクロソリウムの一種がパッチを形成していた。
アルカリ質を好むためか、通常のミクロソリウムとは若干質感が違う。

またクジャクシダも同じ場所に自生していた。

■上記とは別のトレイルで見つけた葉が鋸状になる面白いタイプのミクロソリウムspで自然では岩などに活着するよりも、腐植質の土壌に浅く根を張り巡らせるように自生する。
バンティムルンは菌類も豊富な良い土壌だ。

■トレッキングの帰り、バンティムルンの水田地帯でベモを途中下車し休耕田を見て回る。
休耕田にはミゾハコベspが大群落を形成しており、ここに水が入れば大変美しい水景が広がるのだろうと想像に胸を膨らませながら帰路に向かう。アルカリ土質の為か、水田雑草の種類はきわめて少ない。

森の中ではあまり見ることのできなかったセレベスアゲハが上空を飛んでいる。

■動物奇想天外〜バンティムルンのコウモリ編〜

この木なんか変・・と思いきや、フルーツバットがたくさん生息していた!
この場所は民家の敷地内で人通りも激しいのだが、好き好んでこの場所をねぐらにしている様子。
彼らはいきなり登場した私たちに、まるで挨拶するかのように手を胸の前に当てガヤガヤ鳴いており、その姿はまるで「いらっしゃいませ」と言っているよう。(多分暑いので仰いでいる)もう可愛くてしょうがない・・!
私は大騒ぎしながら可愛いコウモリたちの写真を撮り、大満足のバンティムルンでした。

楽しいコウモリの日常にちょっと触れてみよう。コウモリの会話を翻訳してお届け

「こんにちは〜何してんの?」
→右「ちょっと羽が当たるんだけど・・やめて欲しいんですけど」 左「・・・・(聞いてない)」

「眠いしもう飽きちゃった・・」

→右「!」 左「ぎゃ!」←ぶたれた

→左「不機嫌(怒)」、右「ご機嫌♪」 


■最後に紹介するのは下流の様子

下流にはセレベスレインボーや上流とは違った種類の淡水サヨリが生育している(写真右下)


■セレベスレインボー
↓セレベスレインボーはスラウェシ南部に生育する小型のレインボーフィッシュの仲間でアルカリ性を好む魚だ。
現地では水の流れがよどんだ場所に似たような種類のレインボーとともに共存していた。
また、この場所には巨大サワガニのようなカニも多くみられる。
バンティムルンは奥深く、ジャンルによってはまだまだ未知なる生物も数多く存在する。
機会があったら一度足を運んでネイチャーライフを堪能してみてはいかがでしょうか?

■水中の生き物たち

蝶を撮影していたおなじみの場所で今度は水中を覗いてみよう。PH8.9という強アルカリの硬水でありながらその生物相は豊かだ。
まず目にしたのは艶やかな紋様の淡水サヨリで、群をなして泳いでいる。
またタイの仲間かと思うような魚もいて普通とは違った雰囲気が改めて感じられる。

水面をじっと見ていると時々アオミドロの蔭から何やら黒いものが動いている。しかも多数・・・よくよく見てみるとそれはコガタノゲンゴロウの一種であった。

■スラウェシのトンボはカラフルだ。種類はカリマンタン島と大差はないように思えるが色が圧倒的にスラウェシのほうが派手になっている。
↓「何だか分らないけどまた来てね」
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